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回復を速めてくれたものたち⑨ 自助グループ(前編)

更新日:2020年5月26日


I just hurt.
ストーンヘンジに向かう途中の乗り換え駅で(2018年6月)


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今日は「自助グループ」について書きます。



「自助グループ」とは


自助グループは「セルフヘルプグループ」とも呼ばれます。そもそも「セルフヘルプ」の訳が「自助」です。


「自助」とは、「自分たちで助け合う」こと。つまり自助グループとは、同じ体験をした者どうしが助け合うことを目的とした集まりを指します。


自助グループには「体験」や「境遇」によって無数の種類があります。


身近なのは「患者の会」や「被害者の会」、あるいは「遺族の会」などでしょうか。


当事者だけで運営している会もあれば、専門職や医療機関がコーディネートしているグループもあります。


匿名の会もあれば、実名で参加する会もあります。


活動内容も、「語り合い」や「気持ちの分かち合い」をメインにしているところから、「具体的な相談」にのったり「社会的なアクション」を起こしたりするものまで様々です。


最近は、Twitterやオンラインミーティングアプリなどを活用してインターネット上で活動する自助グループも増えているようです。



利用に至るまで


これまで私は、担当するクライエント(患者さん・ご相談者さん)と一緒に、「仕事として」いくつかの自助グループに参加しました。


アルコール依存症の方のための「断酒会」(実名で参加する)や「AA(アルコホリクス・アノニマス=匿名の会)」。


精神疾患を抱える方が定期的に集まって近況や気持ちをシェアし合うセルフヘルプグループ。


その中で、私は「同じような体験をした者どうしで集まれるのっていいなあ」と感じるようになりました。


当時、私の中には「生きづらさ」の感覚が溜まっていて、それを誰かに打ち明けて、わかってもらいたかったのです。


しかし当時の私は、表向きは「専門職」です。下手に自助グループに出て、知り合いの同業者やクライエントに出くわしたら・・・と思い、私は自助グループへの参加をためらいました。


そうして私は、自身の精神的な課題に、職業上の人間関係を離れて安心して向き合える場所を長い間見つけられずにいました。


ちなみに、私はこのような状態を仮に「サイレント・プロシューマ」と呼んでいます。



私が初めて「当事者として」自助グループに参加したのは、2度めの「バーンアウト(燃え尽き症候群)」になった直後、2014年の早春でした。


さすがに私も「もうあかん」と感じていました。


独りでの「リカバリー」には限界がある


知り合いに出くわす恐怖を感じながらも、私は「回復」や「孤立の解消」の方を選び、ある自助グループの会場のドアを開けました(ああ、恐怖に負けないで回復の方を選ぶ行動をとるのは、いつだって幸せへの近道ですね)。


ところが、初めての自助グループ参加は4ヶ月間ほどで終わりました。


なぜなら、そのすぐ後に再就職に成功した私は、「治った」と思い込んだからです。



再び自助グループの門を叩いたのは4年後、何と今年(2018年)になってのことです。


(なお、私がいま参加しているグループは、私が安心して自分の課題と向き合える貴重な場所であるため、ここで敢えて紹介することはしません。)



「12ステップ」で”人生の棚卸し”


前述の通り、「自助グループ」と一口に言ってもたくさんの種類があります。


私が参加したのは、「12ステップ」というプログラムを用いるグループでした。


「12ステップ」というのは、「アルコホリクス・アノニマス」など「依存症」からの回復を目的とする匿名グループで使われる回復法です。


現在では、統合失調症や感情障害、ひきこもりの自助グループでも活用されているようです。


私にとって、「12ステップ」のテキストは自分の抱える課題の解説書のようでした。


同様の感覚を、以前加藤諦三さんの本を読んだときにも覚えましたが、今回は「全部書いてあるやん・・・!」と感じました。


加藤諦三さんの本が私に与えてくれたのは、私の抱える課題に対する、あくまでざっくりとした説明や「あるある」でした。


「回復のためにはこうしたらいいよ」とも書いてはありましたが、「わかっちゃいるけど、でけへんねん」「どうしたらそうできるねん」と私は思っていました。


「12ステップ」には「回復のためにどういう作業をしたらいいか」が具体的に書いてありました。


それが「棚卸し」と「埋め合わせ」です。


「棚卸し」とは、私たちが「怖れ」や「怒り」「承認欲求」などに衝き動かされて「しでかしてきた」ことたちを、リストアップする作業です。


この作業をすると、「自分が今まで傷つけてきた人」「無下にした好意」「失ってきた人間関係」などが全て明らかになります。


2014年の早春、私はそれら「見たくない過去」をエクセルで一覧表にしました。カンヅメになって約3日間かかりました。


そこには、何百もの「傷つけてしまった人」「すべきでなかった選択」がありました。


それは「私が今まで自ら手放した幸福」のリストと言えました。


私は、日々無数に行う選択や判断を通じて自ら幸せから遠ざかり続けていたことに気が付き、愕然としました。




「謝ることを許可される」


さて、「12ステップ」のプログラムでは、「傷つけてしまった人たち」に対して「埋め合わせ」をすることが重要とされています。


ただし、こちら側の「謝りたい」という都合や気持ちを優先せず、「相手から許されれば」それを行うことが肝心とのことでした。


「棚卸し」を通じて「傷つけてしまった人リスト」を作った私は、「とにかく一刻も早く謝りたい」という気持ちにかられていました。


しかし、それは「罪悪感から逃れたい」という、自己中心的な欲求です。反省とは程遠い態度と言えます。


そんな私にとって、この「相手から許されれば」という但し書きは本当に”目からウロコ”でした。


より精確に言うと、お詫びはこちらの都合でしてはいけない、ということを私は単に知らなかったのです。


それを学ぶ機会が、私の人生の中にはなかったのです。


だから、「12ステップ」を学んでいるとき、私は「自分はいま”人間界のルール”を学んでいるのだ」という感慨を覚えることがあります。


また、それは「幸福になるための法則」のようにも見えました。


「12ステップ」の自助グループでは「平穏」という言葉を使います。ACである私にとって、「平穏」はとても甘美な幸福に思えます。


以来、私は「謝る機会」を与えてもらえるような人間になることを意識するようになりました。


ちなみに、その成果の一端が、離婚後5年経ってようやく表れました。


私は娘との面会を離婚後初めて許されたのです。






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