オープンダイアローグについての対話を始めてしまおう:通っている病院がオープンダイアローグをしていなかったら

最終更新: 6月2日


精神科医療のあり方をガラリと変える、と期待を集める「オープンダイアローグ」。「早く利用したい」という当事者さんや、「早く子どもに使わせてあげたい」と願う親御さんも多いのではないでしょうか。


ところが、残念なことにオープンダイアローグを実施している医療機関はまだ少ないのが現状です。それも首都圏や関西などの大都市圏に集中しており、地方にはいくつか点在しているといった感じです。


これを読んでくださっているあなたが通っている病院やクリニック、訪問看護ステーションがオープンダイアローグを実施していたら、それはとても幸運なことだと言えます。


早く使ってみたいオープンダイアローグ。我が街の病院まで普及するのはいつでしょうか。


また、普及に時間がかかるとしたら、それは何故でしょう。普及するまでの間、待っているしか術はないのでしょうか。


今日はそんな疑問に応えてみたいと思います。



病院などへの普及には時間がかかりそう


現在、精神科の現場で働く多くの専門職がオープンダイアローグに高い関心を寄せています。


それにもかかわらず、オープンダイアローグが日本の精神科病院などの医療機関に普及するのには、相当の時間がかかることが予想されています。


それには、大きく分けて2つの理由があるように思います。


一つは、オープンダイアローグを実施しようとすると、医療界に存在する「ヒエラルキー」に向き合うことが必要になることです。


二つ目の理由は、オープンダイアローグの導入は病院の経営に大きな影響を与えることになる、というものです。



オープンダイアローグの実施は医療界のヒエラルキーに向き合うことでもある


「ヒエラルキー」とは、「どの職種がいちばん権威を持ったり責任を負ったりしているか」という序列のことです。一般に、医療界はお医者さんを頂点にしたピラミッド構造になっていると言われています。


他方で、オープンダイアローグは「対等であること」「多様であること」を最も重要な価値のひとつとしています。


対話ミーティングの中では、お医者さんの意見も看護師さんが言うことも、「ひとつの声」として等価に扱われます。そこでは、お医者さんが言ったことが絶対、とか、専門職をしている人が言うことは患者さんやご家族が言うことより信頼できる、ということはありません。


また、どんな「専門家」も対話の場では一人の人として感じたことを発言します(「専門性の鎧を脱ぐ」と表現されることがあります)。


もちろん、医師や看護師として職業生活を送ってきたその人の個人的経験が、その発言の中に反映されることはあります。とはいえ、「医学的にはこうだからこうした方がいい」というような、一般的かつ断定的な発言をすることには禁欲的であることが求められます。


このような「フラットさ」を対話ミーティングの場で実現するためには、病院などの職場内でも普段から対等なカンケイでいることが必要になります。


いつも「先生先生」と呼んで判断や指示を仰いでいる相手の言うことを、対話の場でだけ「ひとつの声」として扱うのは難しいですよね。


とはいえ、これは非常に難しいことです。


「ヒエラルキー」の頂点にいる医師は、他の職種と比較したとき、飛び抜けて重い責任を負いながら業務にあたっています。強制的な入院をさせる権限もありますし、何かあったときには医療訴訟の対象となることもあるでしょう。


そのような現実がある中で、オープンダイアローグを導入するからと言って明日から「対等」と言われても、お医者さまも受け容れがたく感じるのではないでしょうか。


オープンダイアローグの要である対等性を医療界の中で実現するためには、病院の組織自体をフラットにするという組織変革と同時に、現在の医療システムが(つまり、私たち国民が)医師に負わせている過重な責任をどうするか、という二つの課題をクリアする必要があるのです。



オープンダイアローグの普及は病院の経営に関わる問題


オープンダイアローグは、メインの治療手段を、これまでの薬物療法と入院から「患者さん側と複数のスタッフとの対話」に切り替えるものです(お薬や入院もオプションとして使います)。


また、対話ミーティングは「必要なだけ」繰り返されます。フィンランドでは、2週間のあいだ毎日スタッフが訪問してミーティングを実施したという事例もあるそうです。


他方、日本でこのようなことを実施するには「診療報酬」の問題があります。


診療報酬とは、とても単純化して言えば「どんな治療をしたら病院が国からいくらもらえるか」ということです。


現在の診療報酬のルールでは、オープンダイアローグをすると病院経営が困難になると言われています。1人の患者さんのために複数のスタッフが移動時間も合わせて1回数時間を費やしても、さほどの収入にはならないのです。医師や看護師などの人件費や病院の建物のローンを賄うことはできません。


現在のルール下で、それでも何とかオープンダイアローグを始めようとすれば、病院はかなり本気の経営改革を行わなければならないでしょう。


いまオープンダイアローグを始めている医療機関では、経営者や管理的立場にある人、中心的な医師がオープンダイアローグに関心をもち、組織変革や経営改革を行っている例がほとんどではないでしょうか。あるいは、志のある医師や看護師が独立してクリニックや訪問看護ステーションを立ち上げるといったパターン。


医療機関が本格的にオープンダイアローグを実施するには、経営陣や、少なくとも管理者クラスの強い意志とリーダーシップが必要になる。これがオープンダイアローグの普及に時間がかかるゆえんなのです。



病院の外でオープンダイアローグを始めるという選択肢


それでは、患者さんやご家族は、じっと待つか首都圏へ引っ越すかしか手がないのでしょうか。


私は、そんなことはないと思います。私たちにはできることがあります。


まず、オープンダイアローグに関心のある現場のスタッフさんを見つけましょう。


当事者会や家族会でオープンダイアローグをとりあげ、病院スタッフさんを招いて対話形式の勉強会を開くのもいいかもしれません。


看護師さんや精神保健福祉士さんなど現場のスタッフさんの中には、オープンダイアローグのよさを直感的に見抜いている方が多くいらっしゃいます。お住いの地域でそのような方と出会い、話し合うことで、何かが生まれるのではないでしょうか。


次に、当事者会や家族会のピアサポート活動にオープンダイアローグを用いるのもよいと思います。


ピアによる相談にオープンダイアローグを導入し、その対話ミーティングに、ご相談者の担当支援者さんをネットワークメンバー(ご相談者側の人脈)として招くのはどうでしょうか。


病院の看護師さんなどが勤務時間内に参加することは難しいかもれませんが、地域連携を担うソーシャルワーカーさんや、市町村の相談支援センターの相談支援専門員さんなどにはご参加いただけるかもしれません。そこで皆さんの対話的な支援を目の当たりにし、何か心に感じる専門職は少なくないはずです。


それから、すでに地域でオープンダイアローグを始めている、私たちのような存在もご活用いただけたらと思います。


実際に、「相談室おうち」には「私の通っている病院でオープンダイアローグしてください」という当事者やご家族からの依頼が数件ありました。病院さんのご理解とご協力で、それが実現したケースもあります。


病院さんが直接的にオープンダイアローグを実施していなくても、ご理解とご協力があれば、進行役を外部でまかないながらオープンダイアローグをすることは、現状でも可能なのです。



まとめ


ここまで読んでいただいてありがとうございます。


フィンランドでのオリジナルに近い形のオープンダイアローグ(精神科病院が実施するような)を、お住まいの街で利用できるようになるのには、まだまだ時間がかかりそうです。


とはいえ、あきらめることはありません。


精神科医療のユーザー側が世論を形成していくこと、オープンダイアローグや現在の精神科医療について対話する場を持つこと、ピアサポートでの応用など、できることはたくさんあります。


フェイスブックを活用すると、小規模な勉強会もたくさん見つかります。


私たち「相談室おうち」は東海3県を訪問エリアとしていますが、コロナ禍による必要もあり、Zoomでのオンラインダイアローグを開始し、これまでのところご好評いただいています。オンラインダイアローグは全国対応しています。


お呼びいただければ、あなたの街の勉強会にもうかがって、進行役も務めます。


みなさんの街でもオープンダイアローグ、してみませんか。


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