私の見てきた親子のすれ違いに、けっこうな割合で見受けられる現象があります。
「〇〇をされてイヤだった!」と言う子どもに対して、親御さんがこうおっしゃるのです。
「でも、▲▲もしてあげたのに・・・。」
過去にしてあげたことの話をされ始めるのです。
親御さんはお子さんに責められたと感じ、自分を守ろうとする反応をされているようにも見えます。
あるいは、「してしまったこと」を「してあげたこと」で相殺し、”プラマイゼロ” にしようとしているのかもしれない、といった推測も成り立ちます。
いずれにせよ、このような反応を返されたとき、お子さんはたいていこう感じるでしょう。
「どうして分かってくれないんだ・・・!」
こうして親子はすれ違っていくのではないでしょうか。
このようなときは、以下のことを意識してみると、ちょっと違ってくるかもしれません。
主観的な体験は「検証」しなくていい
この「されてイヤだった」という相手の言葉に対して、反射的に「反応」するのでなく真摯に「応答」しようとすると、その形は以下の2種類に大別されるような気がします。
「ごめんなさい。」
ないしは、
「あなたはそう感じていたんだね。」
この2つです。
「されてイヤだった」という相手の言葉に対し、思い当たるフシがあるときは「ごめんなさい」一択です。
「イヤだった」と言われた→「してしまったこと」が確かにある→「ごめんなさい」。
これが、
「イヤだった」言われた→「してしまったこと」が確かにある→けど認めたくない、そんなときに、人は「してあげたこと」を持ち出したくなります。
この「認めたくなさ」に対してマインドフルでいられるか(自分と向き合えるか)が重要です。
では、「してしまったこと」が思い当たらないときはどうでしょう。
このとき「そんな事実はなかったじゃないか」という方向へ話を進めるのは、あまり得策ではないような気がします。
というのは、みんなそれぞれ主観的な体験の世界を生きているので、「事実」そのものにはあまり意味がないからです。
重要なのは、「イヤだった」と訴える目の前の相手が、かつて「イヤだったという主観的な体験」をした、ということです。
「イヤだった」という気持ちになったのです(それは事実です)。
その気持ちを受け止められぬまま今日まで抱えて生きてきたということ。
そのことへの「応答」が求められているのだと思います。
「ごめんなさい」が言えないのは「ありがとう」を言ってもらっていないから
「されたこと」が「イヤだった」と他者から訴えられたとき、私たちがすべきなのは、「してしまったこと」を認めて「ごめんなさい」と言うこと。
それをつい避けてしまうのには、いくつかの理由があります。
そのひとつに、「してあげたこと」に「ありがとう」と言ってもらっていないということがあります。
ここにもまた「応答されていないままの気持ち」があるのです。そう、親の側の―。
私自身、子どもの立場として「されてイヤだったこと」ばかり指摘してきました。
ところがあるとき、「してもらって嬉しかったこと」を数えていなかったのに気がついたのです。
私(子ども)もまた、「してもらって嬉しかったこと」を「されてイヤだったこと」で相殺しようとしていたのではないか。そう思いました。
ここにも「自分を守ろうとする反応」があります。
「してあげたこともいっぱいあるじゃん」という親側の言い分を認めて、「してもらって嬉しかった」ことも認めて、「ありがとう」と言ってしまったら、自分の「されてイヤだった」という気持ちを否定する(相殺されてしまう)ことになるのではないか。
私はそう思い込んでいました。
少なくとも私自身は、私の気持ちを否定することはしたくない。
自分の味方でいたい。
そんな想いが、「イヤだった」とは別個にあるはずの「嬉しかった」「ありがとう」をずっと否認させていたのです。
もし私(子ども)が、「してもらって嬉しかったこと」を数えて、ひとつひとつ「ありがとう」を伝えたら、そのとき親はどのように応答するでしょうか。
まとめ
「イヤだった」と「うれしかった」は別個に存在します。
「してあげた」と「してしまった」も同様です。
親は「してあげた」ことがあるのとは別に、「ごめんなさい」を言わなければならないかもしれません。
子どももまた、「されてイヤだった」ことがありつつも、並行して、「ありがとう」という必要があるのでしょう。
どちらがどちらを先にやるかは、ケースバイケースかもしれません。
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